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学科・専攻科教員紹介
- 一般教科
水川 航生
| 学科 / 専攻科 | 一般教科 |
|---|---|
| 職位 | 准教授 |
| 学位 | 学士(英米文学) |
| 役職・委員 | 1-1 担任 |
| 専門分野 | 英語教育、第二言語習得(SLA)、スピーチインストラクション |
| 資格等 | 中学校教諭一種免許状・外国語(英語)、高等学校教諭一種免許状・外国語(英語) |
| 所属学会・協会 | 全国英語教育学会、全国高等専門学校英語教育学会、大学英語教育学会、全国語学教育学会、中国地区英語教育学会、Asia TEFL |
| 主な研究テーマ | 第二言語習得研究の知見に基づく英語教育:指導・カリキュラムの設計と実践 ・エビデンスに基づく指導法・タスク設計の検討と、英語授業およびカリキュラム開発への展開 |
| キーワード | #英語教育 #第二言語習得 #SLA #インタラクション #フォーカス・オン・フォーム #FonF #インプット処理 #自動化 #音読指導 #シャドーイング #オーラルインタープリテーション |
| 技術相談分野 | 英語の発音・発話スキルおよびプレゼンテーション表現に関する実践的指導と助言 |
| 社会活動等 | 英語スピーチ・プレゼンテーション大会(弁論・暗唱・即興含む) |
| mizukawa.koki.bo@hiroshima.kosen-ac.jp |
担当科目
研究紹介
発話課題における訂正フィードバックの効果検証 ― 明示性と修正反応の観点から ―
特徴
本研究は、英語のスピーキング指導において教師が学習者の誤りをどのように訂正すると効果的かを、教室での実際のやり取りを通じて検証したものです。検証の対象としたのは「訂正フィードバック」、すなわち学習者が発話の中で犯した誤りに対して教師が行う働きかけです。
訂正フィードバックには大きく二つの型があります。一つは、教師が正しい言い方をさりげなく言い直して示す「リキャスト」です(例:学習者の「She want to buy flower」に対し、教師が「She wants to buy flowers」と返す)。もう一つは、正解を与えずに学習者自身に言い直させる「プロンプト」です(誤りの箇所を指摘したり、文法のヒントを与えたりして自己修正を促す)。リキャストは会話の流れを妨げず学習者の心理的負担も小さい反面、学習者が「ただの相槌」と受け取って誤りに気づかないことがある、という曖昧さが長年指摘されてきました。
本研究の第一の特徴は、この「リキャストの曖昧さ」という古くからの課題に正面から取り組んだ点にあります。具体的には、リキャストをただ与えるのではなく、誤った箇所を音声的に強調するなど、あえて明示性(どこがどう誤りかを明確に示す度合い)を高めた「強化リキャスト」を用い、それでもプロンプトに匹敵する効果が得られるかを検証しました。「リキャストの分が悪いのは曖昧だからだ」という従来の説明が正しければ、明示性を高めれば差は縮まるはずだ、という仮説の検証です。
第二の特徴は、丁寧に統制された実験デザインです。日本人の高校生(高専生)2年生45名を文法テストの結果に基づいて等質な2群に分け、英検3級二次試験を模した一対一の口頭面接を実施しました。全員にまず軽い働きかけ(繰り返し)を与え、自己修正が起きなければ、一方の群には強化リキャスト、もう一方の群には文法説明(メタ言語的フィードバック)を与えるという、明示性を段階的に引き上げる手順を共通化しています。これにより、フィードバックの型による効果の違いを公平に比較できるようにしました。さらに介入の1週間後に同等の課題で事後テストを行い、その場限りの修正ではなく、一定期間後にも正しく言えるか(定着)を測っている点も特徴です。
第三の特徴は、リキャストを「語レベル(単語1つの修正)」と「句レベル(複数語にまたがる修正)」に細分して分析したことです。同じリキャストでも修正範囲の広さによって効果が変わるのではないか、という着眼は、従来「リキャスト」と一括りにされてきたものを解像度高く捉え直す試みです。
成果
最も明確な成果は、明示性を高めたリキャストであっても、学習者自身に言い直させるプロンプト(文法説明)には及ばなかったことです。事後テストでの正答率(修正の定着率)は、リキャスト全体が58.0%だったのに対し、文法説明は90.9%、誘導は100%と、プロンプトが大きく上回りました。リキャストと文法説明の差は統計的にも有意で、効果量も中から大の水準でした。
さらに重要な発見は、リキャストの効果が修正範囲によって大きく変動したことです。単語1つを直す「語レベル」のリキャストは正答率76.9%と比較的高く、文法説明との差は統計的に有意ではありませんでした。ところが複数語にまたがる「句レベル」になると46.5%まで落ち込み、文法説明を44ポイントも下回って明確な差が生じました。同じ「リキャスト」でありながら、修正範囲が広く、文の組み立て直しを要する誤りでは効果が大きく損なわれたのです。
この結果は、リキャストの有効性が、学習者がその誤りを処理する際の認知的な負荷の大きさに左右されることを示唆します。単語1つの軽微な誤りなら、正しい形をさっと示されるだけで学習者は取り込めますが、文全体を組み立て直す必要がある負荷の高い誤りでは、与えられた正解を一度で処理しきれない、という解釈です。
本研究はこの違いを、フィードバックが課す認知処理の質の差として説明しています。プロンプトは学習者に既に持っている知識を自ら検索させ、正しい形を自力で組み立てさせます。一方リキャストは正解を直接与えるため、処理が浅くなりやすい。この「自分で取り出して組み立てる」か「与えられたものを受け取る」かの違いが、記憶への定着の差につながったと考えられます。実際、プロンプトを受けた学習者からは「あっ」「そうか」といった気づきの瞬間を示す反応が複数観察されましたが、リキャストに対してこの種の反応は見られませんでした。
ただし本研究は、リキャストを否定するものではありません。準自由応答の課題では、リキャストの正答率が文法説明をわずかに上回る場面もあり、これは誤りが「聞き逃し」程度の軽微なものだったためと分析されています。ここから、学習者の習熟度や誤りの性質が整っていれば、リキャストが最良の選択肢になりうるという、適用条件に関する示唆が得られました。教育的な含意として、心理的負担が小さく一斉授業でも現実的に運用できるリキャストの実践的価値は揺るがないとしつつ、文構造の作り直しを要する誤りには、学習者自身に修正させるプロンプトへ切り替えることが有効だと結論づけています。

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